医療費控除を申告したのに還付金がないのはなぜか?理由をわかりやすく解説

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「怪我や入院、歯の治療で医療費の負担が多かったため、医療費控除を申告したのに、還付金がもらえなかった!」

そんな経験をされた方がいらっしゃるのではないでしょうか?

私が自治体で税務担当をしていた時、そのような相談を市民からよく受けることがありました。

実は、医療費控除を使っても所得税の還付金が0円になってしまうことがあるのです。

ここでは、「なぜ0円になってしまったのか?」、「確定申告する意味がないのか?」などの疑問について、地方税、所得税の税務経験がある私がわかりやすく解説していきます。

この記事でわかること
・医療費控除で還付金が0円になる理由
・所得税の還付がなくても確定申告をする必要があるか?

医療費控除を申告したのに還付がない理由

医療費控除を申告したのに還付がない理由は主に3つあります。

年末調整で所得税が0円になっている【給与収入の場合】

会社で働いている方は年末調整をして1年間の給与から引かれていた所得税の清算をしていると思います。

その際に毎月の給与から源泉徴収されていた(引かれていた)所得税が全て戻ってきている場合があります。

「扶養人数が多い」、「住宅借入金特別控除を使っている」、「そもそも年収が少ない」などがその理由に挙げられます。

自分が該当するかは「給与所得の源泉徴収票」を見ていただくとすぐにわかります。

赤い枠で囲ってある源泉徴収税額が0円もしくは空白になっている場合は、所得税が0円です。

そのため、この場合は医療費控除を追加しても還付金は0円です。

収入から所得税が源泉徴収されていない【給与収入以外の場合】

自営業の方や不動産の賃貸による収入が主な方は収入から所得税がまったく引かれていない場合があります。

そのため、確定申告で医療費控除を追加しても還付金が0円になってしまいます。

それどころか、収入が多い方は所得税を追加で納付しなくてはいけない場合もあります。

ただし、所得税が納付になる場合は、医療費控除によって所得税額が少なくなるため、意味のある申告と言えるでしょう。

医療費の支払額が少ない

医療費控除を使うには一定以上の医療費の自己負担がなければいけません。

■医療費控除とは

申告する方やその方と生計を一にする配偶者その他の親族のために、令和5年中に支払った医療費がある場合は、次のとおり計算した金額を医療費控除として、所得金額から差し引くことができます。

医療費控除とは
引用:国税庁

所得の合計額が200万円以上の場合、医療費の自己負担額が10万円以上だと医療費控除が使えます。

これは、給与収入で例えると、おおよそ298万円以上です。

年収がこの金額を超えている方は、年間で医療費を10万以上自己負担していない場合は医療費控除を使うことができません。

所得の合計額が200万円以下の場合は、医療費の自己負担が所得の合計額の5%を超える必要があります。

例えば、給与収入が155万円の場合、給与所得は100万円になります。

100万×5%=5万

つまり、医療費の自己負担額が5万円を超えていれば医療費控除が使えるようになります。

自分の給与収入や所得がよくわからないという方は、給与所得の源泉徴収票を確認しましょう。

赤枠で囲ってあるのが給与収入、青枠で囲ってあるのが給与所得です。

ここの金額を使って医療費の支払額がいくら以上必要なのかを計算しましょう。

医療費の支払い額が足りていないかがわかりますよ。

所得税の還付がなくても医療費控除を申告した方が良いのか?

確定申告をした方が良い場合と住民税申告をした方が良い場合、何もしなくても良い場合の3パターンがあります。

確定申告をした方が良い場合

住宅ローン控除(住宅借入金特別控除)を使っている場合は、確定申告をした方が良い場合があります。

住宅ローン控除は、所得税から税額控除(税金から直接引く)した後に余りがあると、住民税(市民税県民税)にも使うことができます。

医療費控除を確定申告で追加することで、所得税で使う住宅ローン控除の金額が減り、住民税で使える金額が増えることがあるのです。

確定申告で得する例
例)住宅ローン控除可能額が25万、所得税が20万の場合

①確定申告をせず、年末調整のみ
 25万ー20万=5万→住民税で使える住宅ローン控除は5万円

②確定申告で医療費控除10万円を追加した場合
 20万ー10万×0,1(所得税率10%)=19万(確定申告した時の所得税)
 25万ー19万=6万→住民税で使える住宅ローン控除は6万円

結果:確定申告をすると住民税が1万円も安くなる!

住宅ローン控除の有利計算はとても複雑なため、自分が得するのか損するのかわからない場合は、税理士やお住いの市区町村の住民税担当課に聞いてみましょう。

住民税申告をした方が良い場合

所得税が0円でも、住民税は課税されていることがあります。

所得税よりも住民税の方が所得控除の金額が少ないからです。

そのため、住民税申告をお住いの市区町村にした方が良い場合があります。

また、住宅ローン控除がある時、確定申告をしたことによって得をしない場合は住民税申告をした方が良いです。

住宅ローン控除を使っている場合は税理士もしくはお住いの市区町村に一度問い合わせてみるのが安心です。

何もしなくて良い場合

所得税も住民税も非課税(税金がかかっていない)の場合は何もしなくて良いです。

どちらの申告をしても何も変わらないため、申告書を準備する時間が無駄になってしまうからです。

自分が扶養されている場合は、扶養者に医療費の支払額を合算できる場合があります。

扶養者に医療費控除の申告をしてもらうことで、節税効果になることあるので、確認してみるといいですよ!

まとめ

この記事をまとめると以下のとおりです。

医療費控除を申告したのに還付金がない理由
・年末調整で所得税が全て戻ってきている(0円になっている)
・収入が少なくそもそも所得税がかかっていない
・医療費の支払額が少ない
還付がなくても確定申告が必要か
・住宅ローン控除があり、住民税の節税になる場合は必要
・住民税がかかっている場合は市区町村に住民税申告をした方が良い
・所得税も住民税も非課税の場合は申告の必要はない

所得税で還付がなくても住民税に影響する場合もあるため、医療費控除をあきらめずによく確認してみることが大切です。

制度を理解して賢く節税対策をしていきましょう!

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